【「塩基」とは】
化学において「塩基」は「酸」の対義語であり、いわゆる「アルカリ性」を持つ物質を指します(より広義な定義も存在します)。しかし、土壌学において単に「塩基」という場合は、石灰や苦土、加里を意味します。この意味の違いの理由を探ってみましょう。
土壌に吸着する交換性陽イオンは、土壌中で酸性を示すものと塩基性を示すものとがあり、そのおもな種類は以下の通りです
- 酸性を示す交換性陽イオン
- アルミニウムイオン(Al3+)
- 水素イオン(H+)
- 塩基性を示す交換性陽イオン
- カルシウムイオン(Ca2+)
- マグネシウムイオン(Mg2+)
- カリウムイオン(K+)
- アンモニウムイオン(NH4+)
- ナトリウムイオン(Na+)
塩基性を示す交換性陽イオンのうち、アンモニウムイオンは微生物により硝酸イオンへと変化します。また、ナトリウムイオンは一般的に植物にとって必須の養分ではありません。よって、それらを除いた三つの塩基性陽イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン)が総称して「塩基」と呼ばれるのです。

【理想的な塩基バランスは?】
一般的に、理想的な塩基バランスは「石灰:苦土:加里=5:2:1」であるとされています。しかし、そのバランスが崩れ、たとえば土壌中に加里が過剰に存在すると、石灰や苦土の吸収が阻害される可能性があります。
これは、カルシウムイオンやマグネシウムイオン、カリウムイオンは互いの性質が似ており、植物に吸収される際に競合関係にあるためです(この競合による作用は「拮抗作用」と呼ばれています)。
